「寝不足は太る」と聞いたことがある方もいるかもしれません。オックスフォード大学が発行する学術誌で、「睡眠パターンと体重には相関関係があるのか?」という論文が発表され、睡眠時間と体重には相関関係があることがわかったそうです。その原因はいったい何なのでしょうか?今回は、寝不足だと太る原因と対処法についてご紹介していきます。

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法

 

ロバート・デ・ニーロの途方もないチャレンジ

1979年、映画『レイジング・ブル』の撮影を中断して、主演のロバート・デ・ニーロはイタリアにいた。
寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
映画で描かれるボクシング・チャンピオンの晩年を演じるため、デ・ニーロはダラしなくなった身体を再現しようと、実際に体重を増やすことにしたのだ。
 
彼の作戦はこうだ。
 
朝昼晩、ひたすら食いまくる──。
 
昔通ったレストランを渡り歩いた。パスタを食べ、ワインを飲む。四ヶ月間、毎日だ。身体は不調を訴え、血圧は上がった。美味しいものを食べるだけの生活を当初は楽しんでいたが、それはどんどん苦痛になっていく。
 
彼は映画の監督であるマーティン・スコセッシにこんな手紙を送っている。
 
「とてもきついよ。食べれば食べるほど太ると思うだろうが、食べること自体が辛いんだ。これは殺人だよ」
 
鬼気迫る肉体改造をしたこともあって、デ・ニーロはアカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞した。
 

人間は食べると太る

このエピソードからもわかることはなんだろう?
 
それは、人間は食べ過ぎると太るってことだ。
 
それは何十年も前から常識だ。今から58年前の本、『高血圧の食療法』(主婦の友社)にはこう書かれている。
 
寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法

主婦の友社『高血圧の食糧法』(主婦の友社)102Pより引用

 
いろんな事情はあれど、結局は食べ過ぎが原因。この本は言い切っている。
痩せる理由はさまざまあるが、太る理由はたいていがこれなのである。
 
だが、もう一つよく知られた話もある。
 
「寝る前に食べると太る」というものだ。いつから言われているのか? 少なくとも40年前には。
 
寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法

『装苑』1974年10月号(文化出版局)

 
雑誌『装苑』の1974年10月号に載っている「あと3キロやせたい人のためのファッショナブル・ダイエット」という記事にはこう書かれている。
 
寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法

『装苑』1974年10月号(文化出版局)185pより引用

 
 
●夜食は絶対にいけません
特殊な職業の人は別として、一般に夜はくつろいで眠るだけですから、とったカロリーの使いようがありません。三度の食事も朝、昼に重点を置き、夕食は軽く済ませるのがいいのです。
 
つまり、こういうことだ。
 
夜はエネルギーを消費しないので、寝てしまうと食べた分がそのまま脂肪になってしまう──。
 
それが、この件に関しての一般的な解説である。
 
ミネソタ大学のホルバーグ博士は、自らの身体と家族を実験体にし、次のような結果を得ている。博士とその妻と娘で、朝1食だけの場合、夜1食だけの場合で体重の増加傾向を調べた。すると3人とも夜1食だけの方が体重が増したというのだ。
博士は脂肪を燃やすホルモンであるグルカゴンの分泌が、夜は少ないことが原因ではないか、と推測している。夜は代謝量が少ないので、太るというわけだ。
 
だが、実はここにはもう1つ「負のスパイラル」が隠されていることが、最近の研究でわかっている。
 
それは「寝不足になると太る」というものだ。
 

睡眠不足と肥満には相関関係がある

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
2006年、オックスフォード大学が発行する学術誌に、こんな研究結果が載った。睡眠パターンと体重には相関関係があるのか? 16年に渡って6万人以上の中年女性を調査したところ、平均睡眠時間が5時間以下の人たちは、肥満になる割合が15%高いということがわかったのだ。
また、スタンフォード大学の調査研究でも、1000人以上の参加者からデータを集めた結果、睡眠時間が8時間以下の人は肥満になりやすいということがわかっている。
コロンビア大学でも同じ結果が出ている。1万8000人を調査した結果、平均睡眠時間が4時間以下の人は、7〜9時間の人よりも73%も肥満になる確率が高いというのだ。
睡眠不足と肥満には確かに相関関係があるのだ。では、因果関係は? 肥満になると睡眠不足に陥りやすいということではないのか?
 
実は睡眠不足になると食欲が増すということもわかっている。なぜそうなってしまうのだろうか?
 

寝不足だと太ってしまうワケ

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
シカゴ大学で行われた実験から、寝不足が脳にどんな影響があるか、以下のことがわかっている。
食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減り、食欲が増すホルモンであるグレリンが多くなるという。
寝ていないとホルモンの作用によって、食欲が増してしまうというのだ。睡眠が短いと、そうでない人に比べて350〜500キロカロリーほど多く食べてしまうというデータもある。
 

翌日、食欲がコントロールできなくなってしまう

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
さらに寝不足になるとこんなことまでわかっている。
カリフォルニア大学バークレー校の研究によって、寝不足になるとジャンクフードが食べたくなることがわかった。
寝不足時には脳の前頭前野と島皮質が働かなくなるので、食欲のコントロールができなくなってしまうというのだ。
いつもは我慢できているのに、「今回だけだから」と開き直って、お菓子を余計に食べてしまう理由。それは寝不足だからかもしれない。
 

その空腹は本物か?

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
以上のことからわかるように、寝不足時の空腹感は、単純にお腹が空いているわけではないかもしれない。
 
こんな話もある。夜中、小腹が空いてお菓子やカップラーメンを食べた、という経験をしている人は少なくないだろう。だが、これは脳の覚醒レベルが下がり、それを脳がエネルギー不足だと判断し、空腹だと勘違いしているというのだ。
 
あなたの空腹は本物ではないかもしれない。ホルモンの分泌や脳の勘違いによって、空腹だと思わされている可能性がある。
 

では、どうすればいいのか

寝不足だと食べ過ぎて太る。その理由とそれでもお腹が空いてしまうときの対処法
空腹感が偽物だとわかっていても、それが消えるわけではない。では、どうすればいいのだろうか。さまざまな専門家がアドバイスをしている。4つほど紹介しよう。
 
ちょうどいい間食を摂る
臨床心理士の岡崎順子氏は、脳が栄養不足を感じたら、は80キロカロリーぐらいの間食を摂ればいいと言う。具体的には以下のようなものだ。
 
板チョコ5切れ
せんべい2枚
ミニアンパン1個
フルーツゼリー1個
 
また、何か口に入れたいという欲求は、5分ほど我慢すれば過ぎ去っていくという。おしゃべりやちょっとしたストレッチで乗りきれるそうだ。
 
②ケーキを家から追い出す
『予想どおりに不合理』などの著書で知られる行動経済学者のダン・アリエリー氏は次のような提案をしている。
 
魅力的な食べものを、家に入れないようにしよう。
 
どんなに自制しようと思っていても、目の前にケーキがあると食べたくなってしまうのは、行動経済学の用語で「現在志向バイアス」と言うそうだ。
 
だったら、ケーキやスナックが目の前からなくなればいい。「冷蔵庫に甘いものを入れない」というようなルールを作ってしまえ。
 
コンビニなどで買ってしまわないように回り道するのもいいだろう。とにかく目に入らないようにする。それも方法の1つだ。
 
③食べ過ぎたあとは炭水化物を抜く
予防医学研究者の石川善樹氏は、食べ過ぎたあとの対処法について、こんなことを言っている。
 
食べ過ぎの翌日と翌々日は、炭水化物を抜こう。
 
そうやってカロリーのバランスを取るのだ。空腹を感じたらどうしよう? ヨーグルトやくるみ、アーモンドを食べると栄養バランスが取れるそうだ。
 
石川氏はダイエット時の間食にはアーモンドをオススメしている。
 
④枕元に哲学書を置く
これはさっさと寝てしまう方法だ。夜中、空腹を感じたとしてもすぐに寝てしまえ。眠気を誘う方法について、快眠セラピストの三橋美穂氏はこんな方法を紹介している。
 
哲学書を枕元に置こう。
 
難しい本を読むと、脳は苦痛を取り除くためにβエンドルフィンを分泌する。これには鎮痛効果や幸福感を高める効果があり、マッサージを受けているときのように眠気がやってくるのだという。
 
ただし、面白い本はダメだ。推理小説などの先が気になる書籍を読むと、ドーパミンが分泌されて脳が活性化してしまうのだそうだ。
 

たまにはしっかりと寝よう。

様々なデータが寝不足と肥満の相関性を示していることがわかった。
 
私たちが感じる空腹は、疲れた脳の勘違いかもしれない。私たちがいつも以上に食欲が湧くのは、寝不足だからかもしれない。
私たちが太りだすのは、あまり寝ていないからかもしれない。
 
いつもより、しっかりと寝る。それが思った以上に多くのことを解決してくれるかもしれない。
 
あなたは今夜、何時に寝ますか?
 
 
【参考文献】
ダン・アリエリー(2016)『アリエリー教授の人生相談室』早川書房
池谷敏郎(2016)『ダイエットの新習慣』朝日出版社
石川善樹(2015)『最後のダイエット』
岡嵜順子(2013)『なぜあなたは食べ過ぎてしまうのか』講談社
メアリー・パット・ケリー(1996)『スコセッシはこうして映画をつくってきた』文藝春秋
主婦の友社(1958)『高血圧の食療法』主婦の友社
ジョン・パーカー(1997)『ロバート・デ・ニーロ 挑戦こそわが人生』共同プレス
三橋美穂(2015)『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』かんき出版
宮崎総一郎、林光緒、内田直(2014)『睡眠のトリビア』中外医学社
リチャード・ワイズマン(2015)『よく眠るための科学が教える10の秘密』文藝春秋
 
 

菊池良
菊池良
ライター。学生時代に「世界一即戦力な男」が話題になり、ドラマ化・書籍化する。そのサイトがきっかけでWeb制作会社に新卒入社。Webメディアで企画・執筆を担当する。2016年4月に一部上場企業に転職。

 

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photo:Thinkstock / Getty Images

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