プロフィール

narita
山本然念
バッドトリップな日常のつけを夜毎支払う小説家フミナー
巧妙な眠気の逃げっぷりに憤りと涙を覚える、やけっぱちな自称小説家、23歳。午前3時が眠りのデッドラインなのに、簡単に越えてしまうので常にヘロヘロ。スリーピーフォローミー!!

マイ不眠DATA

  • 80
  • 4
  • ●●●タイプ

 

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睡眠は釣りに似ている。俺は、[睡魔]を一本釣りする漁師みたいなもんだ。今は午前1時。しかし、魚群探知機のレーダーにはまだ[睡魔]は映らない。

 

明日はいつもよりバイトの入り時間が早く、しかも忙しい。毎月1日は、映画が1100円と格安で観られる「ファーストデイ」なんてイベントがある。お客さんは1.5倍の大賑わい。当然、映画館側はここぞとばかりに気合を入れて、店員も1.5倍に増員して、張り切る。

 

「炊き立てのポップコーンはいかがでしょうかー!!」
「ゴミを回収してまーす!観終わった方はこちらへどうぞー!」

 

と、延々お客さんへの対応。つまり、疲れる。このファーストデイを乗り切るためには、十分な体力が必要になる。「前夜眠れなくて、完徹でのぞむ」なんて事態があっちゃ困るのだ。

 

だから今日は餃子を焼いている。眠りを誘う夜のヌシ、つまり[睡魔]が、餃子の匂いに誘われて出てくるのを待っている。[睡魔]は餃子による満腹感をエサにすると、食いつきが良い。これは俺の中でのジンクスだ。それだけでなく、餃子は[フミン]の大好物。[フミン]が餃子に気をとられている間に、俺は釣りに集中し、近寄ってきた[睡魔]を釣り上げる。

 

実のところ、夕飯はもう食べている。しかし、ご飯を2杯食べた腹具合では、[睡魔]が近寄ってこないから困る。

 

油をひいた鍋に、15個の冷凍餃子を置く。水を入れて、蒸し焼きにする。そのまま10分もすれば、モチっとカリっとハッピーな餃子が出来上がっている。ラー油とポン酢ですぐに平らげてしまうパーフェクトな餃子。うまい。

 

でも、まだダメだ。まだエサが足りない。これでは、[睡魔]は現れない。今度はチャーハンを作る。また餃子も焼く。食べる。

 

これでやっと俺の腹はパンパンだ。
餃子にはしゃいでいた[フミン]も、「もう食べれないよ~」と満足そうな顔を浮かべている。しばらく俺にはかまってこないだろう。

 

ここからの30分間が俺の釣りの醍醐味。”満腹感”というエサに[睡魔]が食いつくのを待つのだ。

 

その間に風呂、歯磨きなどの寝るための準備をする。もしもこの準備を怠り、やっと[睡魔]がエサに食いついたそのときに、

 

「いやー、今はダメだ、風呂に入んなきゃダメだ」

 

なんてことを少しでも考えてしまったら、[睡魔]はエサだけを食らって2度と近寄ることはない。

 

そうして30分ほど経ったころ、ツンツンとエサを突き始める[睡魔]。俺は、急いでベッドに入り、待ち構える態勢をとる。毛布をかけて身体をぬっくぬくにして精神を統一する。さあ、来い!

 

ヤツがガブッとエサにかぶりついた。その瞬間。

 

「フィッシュオーーーン!!」

 

の掛け声とともに一本釣りは始まる。まさに待ったなしの真剣勝負。

 

手繰りよせる糸はあまりに細く、[睡魔]がぐいぐいと引っ張るのでギリギリッと音を立てる。糸を切られてはダメだ。暴れる[睡魔]には張り合わず、じっとその時を待つ。[睡魔]が疲れて動きが鈍る一瞬を。

 

そして、その時は突然きた。ぐったりとした[睡魔]を俺は見逃さない。

 

「ギュルルルルルル」

 

と糸を一気に巻き上げ、そのままの勢いで[睡魔]を宙に放り投げる。そして宙に舞う「睡魔」に抱きつき、これから数時間のナイトクルージングに出かけるのだ。

 

これが、大事な日の前日など、どうしても眠らなければいけない日に行う、俺の唯一の睡眠方法。残念なのは、毎日続けると[睡魔]の引きがどんどん悪くなってしまうこということだ。漁師としての道のりは、まだまだ遠い。

 

【前回の記事】俺は、理想の睡眠環境に旅立つ
【次回の記事】夢を見れば寝れる! のか?

 

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。