肥満肺胞低換気症候群(OHS)とは

OHS(obesity hypoventilation syndrome)は、睡眠呼吸障害のひとつですが、著しい肥満(BMI≧30kg/m2)があり、臥位(寝た姿)では睡眠中のみならず日中の覚醒時にも換気が低下している状態です。
BMI:肥満指数(body mass index; BMI)
=体重(kg)/{身長(m)} x{身長(m)}

 

<日本人の肥満の基準>
BMI≧25kg/m2
肺胞低換気
動脈血の炭酸ガス分圧(PaCO2)は、肺胞換気量によって規定されます。睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠中の無呼吸で一過性にPaCO2は上昇しますが、無呼吸後の過換気で改善するため、持続的にPaCO2が高値になることはありません。肺胞低換気とは、睡眠中のみならず日中覚醒時にも低換気が持続して慢性的にPaCO2が45mmHg以上の高値になる状態です。
ピックウィック症候群
OHSが重症化した病態で、極度の肥満(通常、体重が200kg以上)に用いられる古典的な用語です。ピックウィック症候群は、極度の肥満、周期性呼吸、過眠、痙攣、チアノーゼ、二次性多血症、右室肥大、右心不全の8徴候が揃えば診断されます。

肥満肺胞低換気症候群(OHS)の症状

睡眠時無呼吸症候群の症状と似た、昼間の強い眠気や全身のだるさ朝起きたときの頭痛などがあります。
ほかに、息切れやチアノーゼ、心臓のポンプ機能が低下した右心不全がある場合には頸静脈の怒張、下肢の浮腫をきたす例もあります。
著しい肥満者で、周期性の呼吸異常に気づいた場合はOHSを疑ってください。

肥満肺胞低換気症候群(OHS)の病態

肥満によって腹壁や腹腔内、胸郭へ脂肪が沈着することで、正常な状態よりも呼吸がしづらい状況になります。日中の低換気の証明がOHSの診断には必須ですが、病態的にはOHSも中枢性肺胞低換気症候群のひとつです。
OHSでは化学調節能の障害によって、換気量が減少してPaCO2が上昇します。また、PaCO2の上昇に反比例してPaO2が持続的に低下するので、右心不全や多血症などを合併しやすい病態です。

肥満肺胞低換気症候群(OHS)の合併症と経過

OHSの合併症としては、高血圧、肺高血圧、多血症、右心不全などが見られ、よく似た症状の睡眠時無呼吸症候群の合併症よりも高率に合併することが知られています。とりわけ循環器系の合併症が多く、OHSの未治療患者の死亡率は18か月で23%との報告もあります。予後が悪い病態のため、早期の適切な治療開始が重要です。

肥満肺胞低換気症候群(OHS)の治療法

著しい肥満をともなうことから、病態の重症度に関わらず基本的な治療法のひとつは減量です。
その他、病態に合わせて重症の場合には、補助換気装置(NPPV)による治療が必要なこともあります。
また、日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では著しい肥満に対しては減量手術が選択肢に入ることもあります。

 

参考図書:
『睡眠学』日本睡眠学会編(朝倉書店)2009
『睡眠障害診療ガイド』日本睡眠学会認定委員会ワーキンググループ監修(文光堂)2011
『睡眠無呼吸症 —広がるSASの診療—』 塩見利明編(朝倉書店)2013

監修:
塩見利明先生(愛知医科大学 睡眠科 教授)

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