不眠に悩んだ時期も…プロスケーター・鈴木明子の自然体で生きるコツ
トップクラスのフィギュアスケート選手として、2度のオリンピック出場を果たし、数々の国際大会で華々しい活躍をしてきた鈴木明子さん。2014年の世界選手権を最後に引退し、現在はプロスケーター・解説者、振付師など幅広く活動をしています。
フィギュアスケートは全身を使って演技をし、技術・表現力で芸術性を競う競技。常に身体や精神状態をベストに保つ必要があり、感覚が少しでもズレるとジャンプの精度に影響が出ます。長距離移動や時差ボケ、遠征先の食べ物や文化の違いによる心身への負担を最小限にとどめなければなりません。優雅に見えるけれど、本番では常にベストパフォーマンスを求められる厳しい競技の世界で、鈴木さんはどのように心身のコンディションを保ってきたのでしょうか。

 

“緊張を楽しむ”ために…スケートに全てをかけた現役時代

“緊張を楽しむ”ために…スケートに全てをかけた現役時代
フィギュアスケートは優雅な見た目とは裏腹に、スケート技術のみならず、プログラムを滑りきる体力や身体の軸がぶれないように支える筋力が求められる、とてもタフな競技です。現役当時の鈴木さんも、体力トレーニングに明け暮れる日々でした。「練習は、毎日午前中に2時間、休憩を挟んで夕方に1時間半。スケートの練習の合間には体幹トレーニングを行うというスケジュールでした。オフは週1回だけでしたが、休日も翌日の練習の準備に充てるほど、スケートのことばかり考えていましたね」(鈴木さん)

 

フィギュアスケートは、大会への出場や日本国外を拠点とする外国人コーチのもとでトレーニングを行うこともあるため、海外遠征が頻繁にあります。例えば、トップクラスの選手が集結する「ISUグランプリシリーズ」は、6カ国で開催され、選手たちはそのうちの2試合に出場し、「ISUグランプリファイナル」への出場権を獲得するために競います。さらにその合間には、チーム対抗の「四大陸選手権」や「アイスショー」なども。
そんなハードなスケジュールの中で選手たちは、常にベストコンディションで演技をすることが求められます。身体の感覚がズレないよう、鈴木さんがとくに骨を折ったのが、時差に適応することだったそう。

 

「海外遠征のときは、どうしても感覚が狂ってしまうので、飛行機の中でしっかり眠れないと辛かったですね。睡眠不足はもちろん、時差ボケも演技に大きく影響するので、時差調整にはかなり気を使っていました。私が実践していたのは、移動先の時間に合わせて機内での睡眠時間をずらすという方法。日本時間ではなく現地時間に合わせて、出国してすぐに眠るか、少し我慢してから眠るかを決めていました」(鈴木さん)

 

 

アスリートはとくに食事に気をつける必要があります。よく日本から和食を持っていくというスポーツ選手もいますが、鈴木さんの場合は「現地の食を楽しむ」ようにしているのだそう。ただ、お腹を壊さないように、生ものを避けたり、水に気をつけたりしているそうです。
毎日のトレーニングに加え、そうした細心のコンディション調整を行って迎える試合。それでも、「緊張しなかったことはない」と鈴木さんは言います。

 

「コーチには、“緊張を楽しめ”というよく言われていました。私が肝に銘じているのは、 “『緊張を楽しむ権利』は努力した人にしか与えられない”ということ。緊張している状態でも、最高の演技ができる自分でいられるように、『緊張を楽しむ権利』を得るために、日々、練習を重ねていました」(鈴木さん)

 

寝ても覚めてもスケートのことを考え、緊張を楽しめる境地まで練習に打ち込む…可憐な姿からは想像できないほど、熱くストイックに競技に向き合ってきた鈴木さん。しかしその性格が影響したのか、大学入学と同時に、“ある病”に苦しむこととなってしまいました。

次のページ:眠ることすら困難に…摂食障害の苦しみ

1 2 3 4